感染症エクスプレス@厚労省
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メールマガジンのバックナンバーです。

2019-09-27

感染症情報を医療者へダイレクトにお届けする、厚生労働省のメールマガジン
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┃感┃染┃症┃エ┃ク┃ス┃プ┃レ┃ス┃>>>>>>>>>>>>>>
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   >>>>>>>>>┃@┃厚┃労┃省┃Vol.396(2019年9月27日)
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■ヘッドライン■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

【トピックス】
 ◆風しんの報告が続いています
 ◆インフルエンザの発生状況を公表しました(2019年9月27日)
 ◆RSウイルス感染症の流行が続いています
 ◆フィリピンでポリオ(急性灰白髄炎)が発生しています
 ◆コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が発生しています
 ◆感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラムの研修生の募集を8月23日から開始しました(9月30日締切)
 ◆9月24日〜30日は結核予防週間 “あのとき、○○していれば・・・”
 ◆J-PRIDE研究成果発表会「重症・難治性感染症の理解と予防・治療法の開発に向けて〜若手研究者たちの挑戦〜」開催のお知らせ
 ◆第1回Hospital Water Hygiene研究会学術集会が11月23日に開催されます。
 ◆動画【止めるぞ 風しん 〜おじさま世代の皆様へ〜】を公開中

【感染症発生情報】
 ◆IDWR 2019年第36週(第36号)(2019年9月24日)
 ◆厚生労働省検疫所(FORTH):海外の感染症情報
 (2019年9月13日〜2019年9月27日掲載)
  
【コラムコーナー】
 ◆IDESコラム vol.52 「おそれるべきは…?」

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 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課です。 

 現在、風しんの報告が多く見られています。2018年は、12月30日までに2,917例の届出があり、そのうち、2,857例は7月23日以降の報告でした。2019年は、9月15日までに2,190例の報告があります。患者の多くは、昨年同様30〜50代の男性で、都市圏を中心に報告されています。

詳細は本メールマガジンをご覧ください。
 
 引き続き『感染症エクスプレス@厚労省』をご活用ください。

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 トピックス
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◆風しんの報告が続いています
 2018年は、12月30日までに2,917例の届出があり、そのうち、2,857例は7月23日以降の報告でした。
 2019年は、9月15日までに2,190例の報告があります。患者の多くは、昨年同様30〜50代の男性で、都市圏を中心に報告されています。
 厚生労働省は、今般の風しんの発生状況を踏まえ、厚生科学審議会感染症部会及び予防接種基本方針部会での議論に基づき、これまで風しんの定期接種をうける機会がなかった1962年(昭和37年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日までの間に生まれた男性に対して、抗体検査を前置した上で、予防接種法に基づいた風しんの第5期の定期接種を行うこととなりました。
 対象となる男性は、2022年3月末までの間、市区町村により送付されるクーポン券を使用すれば、原則無料で抗体検査及び定期接種を受けられるようになります。2019年度は、1972年(昭和47)年4月2日〜1979年(昭和54)年4月1日生まれの男性に市区町村がクーポン券を送付します。2019年度にクーポン券が送付されない対象者も、市区町村に希望すればクーポン券を発行し、抗体検査を受けられます。なお、自治体により事業の開始時期や対応が異なるため、お住まいの市区町村にお問い合わせください。

 なお、より多くの対象男性に対して告知し、抗体を獲得していただくために、厚生労働省は、「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」とコラボレーションしたポスター及びリーフレットの作成や、SNSなどを通じた啓発活動を行っております。また、「ラグビー日本代表」を起用した啓発活動を行っております。その他、名刺サイズの案内用紙やクーポン使用上の注意、医療機関向けのクーポン券の使用可否お知らせポスターなどを啓発資料として用意しておりますので、ぜひご活用いただければと存じます。
 以下の風しんの追加的対策特設ページからもダウンロードできますので、是非普及啓発活動の資材としてお役立てください。

<風しんの追加的対策特設ページ>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index_00001.html
■□シティーハンター□■
<ポスター(A2サイズ)>
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/poster_cityh.pdf
<リーフレット(A4サイズ)>
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/leaf_cityh.pdf
■□ラグビー日本代表□■
<ポスター(A2サイズ)>
https://www.mhlw.go.jp/content/poster_rugbyj.pdf
<リーフレット(A4サイズ)>
https://www.mhlw.go.jp/content/leaf_rugbyj.pdf
<ポスターとリーフレットの画像使用について>
 風しんの啓発活動以外の用途では、ご使用をご遠慮申し上げます。また、ポスター・リーフレットの画像を加工・編集してのご使用も固くお断り申し上げます。

<クーポン券の使用可否のお知らせポスター>
https://www.mhlw.go.jp/content/000537268.pdf
<名刺サイズの案内用紙>
https://www.mhlw.go.jp/content/000537274.pdf
<クーポン券の使用上の注意>
https://www.mhlw.go.jp/content/000537276.pdf

 今回の追加的対策の円滑な実施にむけて、引き続き検討を進めてまいります。

<風しんについて>
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/
<風疹 発生動向調査 2019年第37週(’19/9/18現在)> 
http://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/rubella/2019pdf/rube19-37.pdf

【リーフレット】
<体調不良の時はムリしないで>
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/dl/poster15.pdf
<妊娠を希望する女性、妊婦とそのご家族へ>
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/dl/poster14.pdf
<職場は風しん予防対策をしていますか>
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/dl/poster13.pdf


◆インフルエンザの発生状況を公表しました(2019年9月27日)
 全国の定点医療機関当たり報告数は1.16
 2019年第38週(9月16日〜9月22日)のデータを公表しました。
 全国の定点医療機関当たり報告数は1.16となり、前週の1.17よりも減少しました。

<インフルエンザに関する報道発表資料>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html


◆RSウイルス感染症の流行が続いています
 2019年8月より、RSウイルス感染症の報告数が増加しており、現在も流行が継続しています。
 RSウイルスは子どもと大人のどちらにも感染することがあり、症状は風邪の様な軽い症状から、呼吸困難などの重い症状を起こすことまで様々です。特に、新生児や6ヶ月以内の乳児、先天性心疾患や肺の基礎疾患があるお子さんに感染すると、時に肺炎や細気管支炎など、重篤な病態を引き起こすことがあり、注意が必要です。
 感染経路は患者の咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、ウイルスが付着した手指などを介した接触感染が主です。感染対策として、マスクを着用することや咳エチケット、手洗いなどの対策を徹底することが大切です。

<RSウイルス感染症>
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-15.html


◆フィリピンでポリオ(急性灰白髄炎)が発生しています
 2019年9月に、フィリピンにおいて、ポリオ(急性灰白髄炎)の発生が報告されました。急性弛緩性麻痺の症状のある患者さんを観た際は、フィリピンなど、ポリオ流行国への渡航歴を聞いた上で、ポリオの検査をご検討ください。必要に応じて、ポリオや急性弛緩性麻痺の届出の徹底もお願いします。
 なお、フィリピンを含め、ポリオが発生している国に4週間以上の長期滞在を予定している方は、渡航前の追加接種が世界保健機関より推奨されています。特に、1975年から1977年生まれの方はポリオに対する免疫が低いことが分かっており、この世代の方に対しては追加接種が強く推奨されます。
 また、定期接種(四種混合)を終えてない方や、これまでに一度もポリオの予防接種を受けたことがない方は、長期滞在しない場合であっても、渡航前に予防接種を受けて頂くことが推奨されます。


◆コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が発生しています
 厚生労働省では、検疫や国内での対応強化のため注意喚起を行っています。エボラ出血熱の流行地域であるコンゴ民主共和国(北キブ州及びイツリ州)から帰国された方は、検疫官に申告するようにしてください。 
 2018年8月1日(現地時間)、世界保健機関(WHO)及びコンゴ民主共和国(旧ザイール)保健省は、同国北東部の北キブ州において、エボラ出血熱が発生したことを発表しました。2019年9月19日までに、北キブ州・イツリ州・南キブ州の3州において、2,108名の死亡例を含む、3,157例の患者(確定3,046例、疑い111例)が報告されています。また、2018年8月8日から高リスク群に対してのワクチン接種が始まりました。
 2019年6月11日(現地時間)、WHO及びウガンダ共和国保健省は、同国西部のカセセ県において、エボラ出血熱患者が確認されたことを発表しました。2019年8月29日までに、3例の死亡を含む、4例の確定症例が報告されています。これらの患者は、コンゴ民主共和国からの入国者の発症例で、患者への接触者については追跡できているとのことです。
 2019年7月14日(現地時間)、北キブ州の州都ゴマにおいて、エボラ出血熱患者が確認されました。2019年7月17日、今回のエボラ出血熱の流行に関する緊急委員会がWHOで開催され、「国際的に懸念される公衆衛生上の危機(PHEIC)」に該当するとの見解が示されています。
 2019年8月16日、コンゴ民主共和国の保健省及びWHOは、南キブ州でのエボラ出血熱の発生を確認したと発表しました。
 今回の発生地域では、2019年4月18日の武装勢力による病院襲撃により、WHO職員に死傷者が出るなど、反政府勢力による非人道的行為が行われており、以前より外務省から退避勧告が出されています。


◆感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラムの研修生(6期生)の募集を8月23日から開始いたしました(9月30日締切)
 感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラムは、国内外で、感染症危機管理を実施するための能力を身に付けた専門家である感染症危機管理専門家(IDES: Infectious Disease Emergency Specialist)を養成するための厚生労働省のプログラムです。本プログラム研修生(6期生)の採用募集を開始しました。
 近年、国境を越えた往来の増加、都市の過密化、行動様式の多様化など、様々な要因により新型インフルエンザやエボラ出血熱、MERS、ジカウイルス感染症などの新興・再興感染症が出現し、人々の健康に対する世界的な脅威となっています。
 こうした、国際的に脅威となる感染症に対する危機管理には、感染症に関する臨床経験や疫学知識のみならず、行政マネジメント能力、国際的な調整能力等、総合的な知識と能力が求められます。同時に、国民の生命と健康を新興・再興感染症から守るためには、こうした知識と能力を有する人材を継続的に育成し、国内外で活躍していただくことが不可欠です。
 厚生労働省では、平成27年度から国際的に脅威となる感染症の危機管理対応で中心的な役割を担う将来のリーダーを育成するため、関係機関がネットワークをつくり、本プログラムを開設しました。平成30年度には、バングラデシュへ、地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)チームの一員として本プログラムから1名派遣しました。
 応募期間は8月23日〜9月30日(当日消印有効)です。詳細は採用案内をご覧下さい。
 多くの医師の皆様の応募をお待ちしています。 
<感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム>
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/ides/index.html
<「感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム」採用案内>
http://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/saiyou/kikikanri/index.html


◆9月24日〜30日は結核予防週間 “あのとき、○○していれば・・・”
 厚生労働省では、毎年、9月24日〜30日の結核予防週間に、広く国民の皆様に、結核についての理解を深めていただく期間としています。
 結核は、患者数及び罹患率(人口あたりの新規結核患者数)は順調に減少しているものの、今でも年間15,000人以上の新しい患者が発生し、約2,000人が命を落としている日本の主要な感染症です。
 結核の症状には特徴的なものはなく、咳、痰、微熱や倦怠感など、私たちが日常的に経験する「風邪」の症状とよく似ています。異なるのはそれらの症状が長引くことです。
 啓発ポスターでは、せっかく病院に行ったのに、症状を上手に医師に伝えられず、結核が進行して入院することになった患者と、症状の聞き取りが不十分だったため、いつもの「風邪」だと思って必要な検査をしなかった医師の心境を描いています。病院を受診した時にいつもの「風邪」と違うところを医師に伝える、医師は受診した方のいつもの「風邪」の症状とは異なるところを聞き出す、それによって結核の可能性を考慮して、早期診断につなげていただきたいとの考えから「あのとき、○○していれば・・・」を本年の結核予防週間の標語としました。
 9月24日〜30日の結核予防週間を機に、ポスター・リーフレットをご活用くださいますようお願いします。
<啓発ポスター>
https://www.mhlw.go.jp/content/_A2_poster_ol_tonbonashi_s.pdf
<啓発リーフレット>
https://www.mhlw.go.jp/content/000544647.pdf
<結核(BCGワクチン)>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/


◆J-PRIDE研究成果発表会「重症・難治性感染症の理解と予防・治療法の開発に向けて 〜若手研究者たちの挑戦〜」開催のお知らせ
 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)は、事業発足3年目を迎える感染症研究革新イニシアティブ(J-PRIDE)において創出された成果を紹介する研究成果発表会を開催します。J-PRIDEでは、異分野連携や斬新な発想に基づく挑戦的な課題から、数々の顕著な成果が生み出されてきました。本発表会が、感染症研究関連分野から参加される皆様にとって、新たな着想を得て、研究ネットワーク拡大の機会となることを期待します。

 日時: 令和元年11月18日(月)9:00〜17:40、11月19日(火)8:55〜17:50 
 会場: イイノホール (東京都千代田区内幸町2-1-1)
 詳細: https://www.amed.go.jp/news/event/jpride_sympo_2019111819.html
 お申し込み方法:以下URLよりお申し込みください。
https://www.d-wks.net/amed191118/form/


◆第1回Hospital Water Hygiene研究会学術集会が11月23日に開催されます。
 下記の通り、第1回Hospital Water Hygiene研究会学術集会が開催されます。参加ご希望の方は事前申込制となりますので、下記URLをご覧ください。

 第1回Hospital Water Hygiene研究会学術集会
 日時:2019年11月23日(土) 12:50〜17:45
 会場:東京医科大学病院 臨床講堂 (東京都新宿区西新宿7−1)
 メインテーマ:医療機関の給水給湯系統に存在する病原微生物問題を考える
 主催:Hospital Water Hygiene研究会
 協力:厚生労働省科学研究費補助金(厚生労働省科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)「公衆浴場におけるレジオネラ症対策に資する検査・消毒方法等の衛生管理手法の開発のための研究」班、「化学物質等の検出状況を踏まえた水道水質管理のための総合研究」班より微生物分科会
 URL:https://fs.lck-cloud.jp/u13673/annualmeeting/


◆動画【止めるぞ 風しん 〜おじさま世代の皆様へ〜】を公開中
 YouTubeにて動画【止めるぞ 風しん 〜おじさま世代の皆様へ〜】を公開しております。風しんの患者が急増する中、40代、50代の皆さま、その他の皆さまも、すぐ検査に行っていただきたい思いを動画にし、公開いたしました。
 風しんはなぜ怖いの?クーポン券とは?どうやって使うの?など、わかりやすく動画にて説明しております。ぜひ皆様の視聴および周りの方への視聴のお勧めをお願いいたします。
<動画はこちら>(YouTubeへリンク)
https://www.youtube.com/watch?v=IUQZN1J4zI4


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 感染症発生情報
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■国内の感染症発生状況

◆IDWR  2019年第36週(第36号)(2019年9月24日)
 インフルエンザの定点当たり報告数は第31週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い
 
<IDWR 感染症発生動向調査週報>
https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2019.html


■海外の感染症発生状況

◆厚生労働省検疫所(FORTH):海外の感染症情報
 (2019年9月13日〜2019年9月27日掲載)

2019年09月26日 ポリオのアウトブレイクーフィリピン
https://www.forth.go.jp/topics/20190926.html
2019年09月24日  グアムにおけるデング熱の発生にかかる情報
https://www.forth.go.jp/topics/20190924.html
2019年09月18日  ネパールにおけるデング熱の発生にかかる情報
https://www.forth.go.jp/topics/20190918.html
2019年09月17日  エボラウイルス病−コンゴ民主共和国(更新38)
https://www.forth.go.jp/topics/20190917.html


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 コラムコーナー
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◆IDESコラム vol.52 「おそれるべきは…?」
  IDES養成プログラム5期生:吉見 逸郎

 IDES5期生の吉見です。現在、12月末まで厚労省健康局結核感染症課に配属され、ポリオ根絶を目指す取り組みのほか、風しんの追加的対策に関する啓発、エボラ出血熱に関する対応など、国内外の感染症関係の事案に関わらせて頂き、日々実践的に学ばせて頂いています。IDESはちょうど6期生の募集がありますが、感染症診療現場で尽力されておいでの先生方だけでなく、公衆衛生、保健所などで研鑽をつまれておられる先生方もぜひ応募をご検討ください!
 さて、皆様は小松左京氏の小説「復活の日」をお読みになったことはあるでしょうか。かくいう私は実は無いのですが、映画「復活の日」は小学生のときに観ました。英題は”VIRUS”、=ウイルスですが、当時は「ビールス」と言っていたような気がします。以下ネタバレです。
 核戦争の脅威の時代、生物兵器を研究していた実験室から「ビールス」が盗まれ、搬送・逃走中に悪天候で雪山に衝突し、全員死亡して「ビールス」の容器も破損してしまいます。それから春になり、「ビールス」の液も溶けてしまい、ふもとの農村では謎の病気によって動物やヒトが死んでいきました。謎の病気は徐々に拡がり、「○○かぜ」と呼ばれ世界を恐怖に陥れました。壊滅的な影響をうけ、生存者は各国から派遣されていた南極基地の隊員たちを残すだけとなり、人類は滅亡の危機に瀕してしまいます。追い打ちをかけるように、実はある国では核攻撃後の壊滅状態でも反撃できるシステムを作動させていて、巨大地震が起こると、そのシステムが勘違いして作動し、核ミサイルを発射してしまう・・・人類滅亡の危機です。そこで南極から、地震の前にそのシステムを止めるため北上して指令基地に入りましたが、間一髪間に合わず、地震で勘違いしたミサイルが発射されてしまいます。が、核ミサイルの影響なのか、「ビールス」の影響が弱まった世界に、南極基地に残されていた人々が戻っていく…という流れでした。
 子供のころのあいまいな記憶によるもので、正確ではないかもしれませんが、子供心にはとにかく、これでもかという壮大な恐怖の連続で、1980年代には、知らないところで新種の「ビールス」が広がり始めていて、いつかニュースになる・・・と本気で怖かったです。実際1980年代半ばにHIVウイルスが「発見」されましたが、「それが実は作られたビールスじゃないか」と思っておりました。
 さて、ウイルス学の研究がさらに発展した今日からすれば、つっこみどころはあるのでしょうが、小松左京氏の小説「復活の日」は1964年に書かれたものだとのことです。「ビールス」もまだ最先端どころか、よくわかっていないことが多かった時代だったと思われます。取材力、想像力、は本当にすごいと思いますし、大学時代の微生物学の教授も、珍しく同作品のことを評価されていました。
 しかし、大人になって映画「復活の日」DVDを見ると、新型の微生物の恐怖ではないところに「こわさ」があったことに気づきました。
 核戦争や自動報復システム、はたまた生物兵器やその盗難…すべてヒトが考え行ったことです。それらもさることながら、南極基地に残された各国の隊員たちが、生き残りをかけて話し合い、協力し、時に裏切り…ここでもヒトの姿、群像劇が展開していました。その様子は紛糾する国際会議ではありませんが、ある意味類似の構造が濃く表現されていました。様々な立場や背景を抱えた人々がぶつかりあう濃厚な「場」です。
 そういえば映画「復活の日」は深作欣二監督の1980年の作品ですが、同監督は「仁義なき戦い」シリーズや、晩年の作品でも物議を醸した「バトル・ロワイヤル」などで有名です。異端、暴力…などで括ることは簡単ですが、監督はもしかすると、様々な人々の群像劇、ヒトとヒトのあいだに起こるものごと…に徹底的に焦点を当てたかったのではないか、と思いました。
 危機管理ということでは、やはりさまざまな背景のヒトとヒトのあいだで起こることがたくさん出てきます。国際的に懸念となっている感染症でも、なかなか食い止められない背景には、紛争や集団間の力関係が存在していることも珍しくありません。前回扱ったポリオの撲滅が後ろ倒しになっていることもまさにその一例ですね。そうした国際的な課題に限らず、日常的な感染症の発生やその対応も、地域の危機管理のひとつでもあります。
 国際、地域、関係なく、そこにはさまざまな背景を抱えるヒトとヒトとのあいだで起こることがたくさん出てきますが、地域、関係者、構造などを多面的にとらえ、感染症の拡がりを抑えるための「協調」をどう結い上げていくのか。そんな視点も求められているのかもしれない、などと、映画「復活の日」を想い出し、日々発生する大小の感染症対策事案を通じて考えています。


●当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
●IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で4年前の平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。

<感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム>
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/ides/index.html

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(編集:相原 瑶)
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