感染症エクスプレス@厚労省
バックナンバー
メールマガジンのバックナンバーです。

2016-09-16

感染症情報を医療者へダイレクトにお届けする、厚生労働省のメールマガジン
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┃感┃染┃症┃エ┃ク┃ス┃プ┃レ┃ス┃>>>>>>>>>>>>>>
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   >>>>>>>>>┃@┃厚┃労┃省┃Vol.264(2016年9月16日)
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■ヘッドライン■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

▼トピックス▼  
 ◆9月24日〜30日は結核予防週間です
 ◆RSウイルス感染症の報告数が増加しています
▼感染症発生情報▼
 ◆IDWR 2016年第35週(第35号)(2016年9月16日)
 ◆厚生労働省検疫所(FORTH):海外の感染症情報
    (2016年9月9日〜9月16日掲載)
▼編集室より▼
 ◆「あさコラム」vol.21「記憶と記録」
   浅沼結核感染症課長によるエッセイを不定期にお届けします
 
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 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課です。
  
 来週9月24日から結核予防週間です。厚生労働省ホームページにポスターを
掲載しておりますので、医療関係者の皆様におかれましては、啓発にご活用
ください。
 詳細は本メールマガジンをご覧ください。

 今後も引き続き『感染症エクスプレス@厚労省』をご活用ください。

   
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▼トピックス▼
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◆9月24日〜30日は結核予防週間です
  “知ってますか?「結核」が現代の病気だってコト”
 〜日本では、1日に50人、年間18,000人が新たに発症し、2,000人の方が亡
くなっています。「結核」は今でも私達の身近にある病気です。2週間以上、
咳やたんが続く場合は早めの受診を〜

 厚生労働省では、毎年、9月24日〜30日を結核予防週間として、
 広く国民の皆様に、結核についての正しい理解を深めていただく期間とし
ています。

 結核は、化学療法により完治する病気ですが、きちんと服薬しないと、治
療が困難な多剤耐性結核となることもあります。
 結核のまん延を防止するため、結核患者が確実に服薬して治療を完遂でき
るよう、医療機関や薬局等の地域の関係者の皆さまの協力をいただき、地域
全体で結核患者を支援することが重要です。

 結核患者の4割が80歳を超えています。高齢者の結核治療には、周囲の方
々のサポートがより重要となります。

 結核予防週間を一つのきっかけとして、「結核」は過去の病気ではなく、
結核患者が確実に服薬を行い、治療を完遂するには、医療従事者の方々をは
じめとした地域全体の協力が不可欠ですので、ご協力をお願いいたします。

○長引く咳等の症状を訴える方が受診された際には、結核の可能性も視野に
 入れた診療をお願いいたします。
○医療従事者は、結核患者と接触する機会が比較的多いと思われますので、
 長引く咳等、体調が思わしくない場合は、速やかに医師の診察を受けるよ
 うお願いいたします。

<厚生労働省:結核について> ※結核予防のポスターもぜひ御活用ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/index.html
<厚生労働省:平成27年結核登録者情報調査年報集計結果>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132952.html


◆RSウイルス感染症の報告数が増加しています。

 RSウイルス感染症(毎年11月〜1月に流行)の報告数が増加しています。
 RSウイルス感染症の特徴や対策についてご紹介しますので、今後の発生動
向も含めてご留意ください。

 RSウイルスの「R」は呼吸器(Respiratory)、「S」はウイルス感染後の細
胞の形態(合胞体:syncytial)を意味しています。その名の通り、呼吸器
の症状が多く、軽症の鼻汁や咳などの感冒様症状から、重症の喘息様のゼエ
ゼエした咳になる細気管支炎や肺炎まで様々です。乳幼児期のお子さんや高
齢者において、重症化を起こすこともあります。

 家族内では感染伝播しやすいと言われています。乳幼児から成人まで全年
齢層で感染の可能性があります。医療機関では未熟児など特に重症化しやす
い方にはパリビズマブでの予防が推奨されています。
 ウイルス自体は適切な濃度のアルコール消毒などで無力化しますが、ウイ
ルスが原因の疾患なので、抗菌薬は効きません。治療法は対症療法のみです。

 ワクチンもありませんので、予防のためには、患者のだ液や鼻汁から感染
するため、それらがついたものは適切な濃度のアルコールで消毒することが
必要です。また咳等の呼吸器症状がある場合は、マスクを着用することが大
切です。

<国立感染症研究所:RSウイルス感染症とは>
http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/317-rs-intro.html
<厚生労働省:RSウイルス感染症Q&A(平成26年12月26日)>
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html
<国立感染症研究所:IDWR 2016年第34週(8月22日〜8月28日)>
http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/idwr/latest.pdf


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▼感染症発生情報▼
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■国内の感染症発生状況

◆IDWR 2016年第35週(第35号)(2016年9月16日)
 感染性胃腸炎の定点医療機関当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と
比較してかなり多くなっています。
 また、インフルエンザ、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、手足
口病、マイコプラズマ肺炎、感染性胃腸炎(ロタウイルスに限る)の定点医
療機関当たり報告数はで増加しました。加えて、RSウイルス感染症の報告数
は増加しました。
 その他、流行性耳下腺炎の定点医療機関当たり報告数は減少しましたが、
過去5年間の同時期と比較してかなり多くなっています。

IDWR(感染症発生動向調査週報)2016年第35週(第35号)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2016.html


■海外の感染症発生状況

◆厚生労働省検疫所(FORTH):海外の感染症情報(2016年9月9日〜9月16日掲載)
2016年09月13日ジカウイルス感染症とその合併症について噂の払拭
http://www.forth.go.jp/topics/2016/09131640.html
2016年09月12日黄熱の発生状況(更新19)
http://www.forth.go.jp/topics/2016/09121054.html
2016年09月09日ジカウイルス感染症の発生状況 (更新30)
http://www.forth.go.jp/topics/2016/09091604.html


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▼編集室からのお知らせ▼
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◆「あさコラム」vol.21「記憶と記録」

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 先日、広島東洋カープが25年ぶりにプロ野球セントラル・リーグの優勝を
飾りました。
 優勝を決めた試合、カープの支柱である黒田博樹投手と新井貴浩選手のベ
テラン両選手の男泣きには、カープファンならずとも涙を誘われました。
 今年は、黒田投手が日米通算200勝を、新井選手が通算2000本安打を達成し、
両選手にとって節目の大記録を残した1年にもなりました。

 実は、この広島東洋カープの前回の優勝時(平成3年)の前後に生まれた方々
を中心に、麻しん感染の心配があります。
 ご存じのとおり、麻しん対策については、平成18年度から麻しん予防接種を
1回接種から2回接種に移行するとともに、平成20年から5年間の臨時措置で、
当時の中学1年生相当の年齢の方(第3期)と高校3年生相当年齢の方(第4期)
へ予防接種を進めてきました。
 その結果、平成21年以降は患者数は激減、平成22年11月以降はウイルス分離
・検出状況によると海外由来型のみになりました。その結果、平成27年3月27日、
世界保健機関西太平洋地域事務局(WPRO)によって、わが国が麻しんの排除状
態にあることが認定されました。
 この背景としては、全体の麻しん予防接種率の向上のおかげもあり、現在の
20歳代、30歳代を中心とする未接種者の方々が麻しんウイルスの感染から免れ
てきていたとも言えます。
 今回の麻しん感染事例を見てみますと、やはり予防接種歴がない方々の感染
が多く、麻しんに関しては予防接種の効果の大きさを改めて感じているところ
です。

 もちろん、予防接種も万能ではなく、2回の予防接種で麻しんの抗体価が絶対
に上がるという訳ではありませんので、予防接種をしたのにもかかわらず麻しん
に感染される方もいます。
 しかし、その感染割合は低いというのが定説でしたが、とある事例報告によ
りますと、2回接種歴のある方々の麻しん感染比率が高かったとのことで、この
点、私も不思議に思っています。
 その理由を専門家の先生方にお尋ねしても、首をかしげて「よくわからない」
との回答ばかり。
 ただし、この事例報告では、麻しん予防接種歴の確認は母子健康手帳に留ま
らず、本人の記憶によるものも含まれているとのことでした。
 
 ここでふと胸に手を当ててみると、私の母子健康手帳は、遠くの実家にへそ
の緒と一緒に保管されているはずなのですが、この数十年、自分で確認したこ
とはありません。
 また、私の周囲で尋ねてみたところ、自分のお子さんの母子健康手帳は大事
に保管していても、自分自身の母子健康手帳は手元にない(実家にある)との
回答多数。
 こうした状況を踏まえると、麻しんに感染した20歳代以上の方々が、改めて
麻しんの予防接種歴を母子健康手帳で確認することは容易ではないと思います。
(実家に住んでいるならともかく、ですが・・・)

 今やIT・スマホの時代。
 予防接種歴を含めた個人の生涯の健康データについて、本人が容易に確認で
きる環境ができて当然ではないでしょうか。
 自治体によっては電子母子健康手帳の試行が始まっていますが、こういった
事業こそもっと促進し、更に踏み込んで電子生涯健康手帳なるものを開発して
欲しいものですね。
 麻しん流行が確認された現地で対応に追われている国立感染症研究所感染症
疫学センターの多屋馨子先生も、
 「『記憶で接種2回』なのか『記録で接種2回』なのかはとても重要。き『お』
く と き『ろ』く、ひらがな一文字大違いという部分です。」
 と、鋭い指摘をされています。

 選手の初勝利や初安打、節目の勝利や安打などが直ぐに分かるのと同じく、
予防接種歴や罹患歴など感染症に関する情報について、本人が容易に確認でき
るよう、私も何か考えていきたいと思います。
 記憶も記録も大切なのは、プロ野球も感染症対策も同じですから。


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